香港デモと日本の民主的教育について(前編):正解のない問題⑥-1
※このブログを書いたのは2020年です。何度も書き直しています。
香港で周庭さんが逮捕→保釈されましたね。
周庭さんの主張や行動については、立場や見方によって意見が割れると思いますが、一旦それは置いといて
香港の件は、全然他人事ではないよね?
という話を
主に
- 歴史や時事問題のニュースが苦手
- 香港デモの内容がよくわからない。なんでデモしているの?
- 日本となんか関係あるの?
という人向けに前、中、後編に分けてお話しします。
今回の前編では、これまでの中国と香港の関係についてザックリ話します。
目次
⓪何に対して抗議してたの?
まず最近の香港デモは2019年の逃亡犯条例改正案抗議から始まりました。
経緯をザックリ説明するとこうなります。
⇓
香港にて、ある男性が台湾に旅行してた時に同伴した自分の彼女を殺害していた件で逮捕された。現地である台湾に捜査依頼
↓
台湾「でも香港さん、うちらって犯罪者の引き渡しルールとかちゃんと作ってなかったよね?ソイツの引き渡しどうしよっか?」
香港政府「じゃあ、必要に応じて中国と台湾が要請したら引き渡していいってことにしよっか。条例改正するわ。」
香港の人たち「それは反対します!」
デモへ
⇓
さて香港の人たちは何故反対したのでしょうか?
それを理解するためにはまず中国と香港の歴史の歩みを知る必要があります。
度々行われる香港デモですが、毎回争点となるのは
国民を管理して安全を維持したい:中国共産党
VS
という対立構図(ジン太郎視点)となります。
➀そもそも中国と香港って何が違うの?:一国二制度
たしかに香港は中国の中にある都市です。
しかし特殊な事情があり、
という仕組みになっています。
中国は共産党という組織がトップに立つ国です。
香港は中国内の都市ですが、
中国と香港では
それぞれ別の制度による自治が行われています。
今回の話に関連する大まかな(ホントに大まかな)違いを説明します。
【経済】
中国:共産(社会)主義
- 利点:みんなで生産した富を共産党の管理のもと平等に分配する。
※中国の市場は後の改革によってある程度自由化されるが、説明は割愛
- 欠点:頑張った人も、サボった人も同じ報酬。
※中国は度々改革して資本主義の要素も取り入れているけど今回は割愛
香港:資本主義
- 利点:自由経済、競争もあり、個々の生産に応じて富を分配する。
- 欠点:貧富の差が生まれる。(資本主義国家では救済用の福祉制度がそれぞれ実装されていることが多い)
【社会思想】
- 国家や共産党を敬い、政府の言うことをちゃんと聞こう。国を愛する気持ちがあるなら反抗的な態度は良くないよね。
- 利点:トップ(中国共産党)を主体に国がまとまる。
- 欠点:言論の自由が制限され、社会への疑問や問題点などを発信・改善しづらくなる。
香港:民主主義傾向
- 社会のルールは国民の皆で決めよう。
※香港政府の選挙制度は中国共産党が決めているため何度も議論されている。(後述)
- 利点:多様性が認められ、様々な意見交換ができる。
- 欠点:考え方や意見の違いによって国民の間で摩擦が生まれることがある。
②何故二つの制度に分裂したの?
1842年に中国、イギリスにアヘン戦争で負ける。
↓
香港がイギリスの植民地となる。
↓
香港はイギリスの影響を受けて、中国とは別の社会発展を歩む
↓
第二次世界大戦終了、冷戦開始
世界の勢力構図↴
アメリカを中心とする資本主義派 VS ソ連を中心とする社会(共産)主義派
↓
中国:共産主義派
&
イギリス:資本主義派 = 香港:資本主義派
↓
冷戦終結。そして....
世界の人達「植民地支配って良くないよね?」
↓
1997年
イギリス「そうだね!じゃあ香港を中国に返すわ!」
↓
香港返還!めでたしめでたし....とはなりません!
普通、返してくれるなら喜びそうですよね?しかし香港の人たちの言い分はむしろ
「私達!今の方が良い!!」
だったのです。何故?
そもそも当時の香港人の多くは、自分たちが中国人という感覚が薄いです。
実はイギリスにとって香港は、貴重なアジア植民地だったため、とても大事にされていました。香港の人々にとっても当時の時点でかなり豊かな発展を遂げています。
彼らが話している言葉も基本英語です。
なので…
「ぶっちゃけ資本主義社会で特に不便してない!今更変えるなんて嫌だ!」
↓
つまり香港としては
「あの時は略奪愛みたいな感じだったけど、今の彼氏の方が良い!今更元カレの所なんて戻りたくない!アイツめっちゃ束縛激しいし!!」
みたいな感じです。
まず香港が中国だったのって150年前ですからね。付き合ってたことすら忘れてたと思います。
というわけで、次のような一国二制度が決まりました。
香港「いずれは普通選挙やって行政も独立するからね!」
中国「お、おう。この一国二制度は50年間(2047年まで)の予定だから。その間にお互いにちょうどいい落としどころを話し合おうよ。」
ここで大事なのは、未だに香港政府はあくまで中国共産党の強い影響下にあるということです。
③なんでデモが起きたの?何で揉めてるの?
一国二制度が成立してから今日までの間、香港では度々抗議活動が行われていました。
中国政府のやり方は独裁だという意見や、香港デモは野蛮でわがままだという意見もあります。
僕は前者ですが、世界には様々な正義があります。
民主化を巡る出来事について、最近の有名なものを述べます。
2003年:【国家安全条例反対デモ】
中国「中国に対して反逆、反乱、分裂やそれを煽るといった行為を禁止する条例を作ります。国に対して悪いことしたら捕まえます。」
香港人の言い分↴
50万人のデモによって撤回。
※2020年6月30日に成立した香港国家安全維持法については⑤で少し話します。
2012年:【愛国心教育カリキュラム必修化抗議デモ】
中国「この素晴らしい中国という国を愛する気持ちを教育で養おう!」
香港人「国=共産党にならない?私たちが何を愛して、何に従い、何を正しいと判断するかは自分たちで決めるから、偉い人たちに強制(洗脳)されたくない!」
↓
学生団体を中心にデモによって撤回
この時から周庭さんも参加されたようです。
2014年:【雨傘運動】
香港人「選挙の投票権はまだ共産党が仕切っている。いつになったら私たちの意見反映できんの?」
政府「2017年から、香港の人たちによる直接選挙に変えるよ!」
香港人「やったぁ!どういう投票制度なの?」
政府「それ用の委員会から過半数の支持を得た人が立候補するからみんなで投票して!」
香港人「ねえねぇ、委員のリスト見たけどその委員会ってほとんど共産党派の人達じゃない?」
政府「......」
↓
デモ勃発。警察がデモ参加者に催涙弾を投げつけるから雨傘で対抗した。
この新たな立候補制度案は2016年に否決。
しかし未だに普通選挙は実現してない。
2015年:【中国の情報管理と香港の書店員失踪事件
社会背景↴
- 1989年の天安門事件:中国で大勢の国民が政治や経済の民主化、自由化を求めて天安門広場に集まって抗議してたのに対して、戦車を出動させて兵士が発砲して大勢亡くなった。
- 中国ではインターネット検索しても、毛沢東の批判された政策や天安門事件の記録は出てこない。またSNSやインターネットの情報はサイバー警察が管理しており、国家や共産党への批判的発信は「治安維持の観点」から通報される。
2015年、香港にて共産党に対する批判本や天安門事件などの記録が記載された本を扱う書店の人々が失踪。
↓ 翌年
2016年
香港人「あ、書店の人たち帰ってきた!急にいなくなったけどどうしたの?」
書店員A「言えない。店閉めるわ......」
書店員B「うちも理由は言えないけど閉める......」
書店員C「実は中国に拉致されて扱っている本について脅されていました......」
香港と世界「え?マジで?(ドン引き)」
2019年:【逃亡犯条例改正案抗議デモ】
ここまでの流れを見たうえで、もう一度去年のデモの流れを見てみましょう
香港:「ねえ台湾さん、最近うちで逮捕した人の話だけど、台湾に旅行してた時に同伴した自分の彼女を殺害していたのね。殺人が起きた現地の台湾の方で捜査してもらわないとかな?」
台湾:「でも香港さん、うちらって犯罪者の引き渡しルールとかちゃんと作ってなかったよね?ソイツの引き渡しどうしよっか?」
香港政府:「え、なになに?それじゃあ…
必要に応じて中国と台湾が要請したら引き渡していい
ってことにしよっか。条例改正するわ。」
香港人:「ふざけんなあああああ!」
香港政府:「なんで?」
香港人:「いや、今までのパターンからして、その条例改正を認めたら、もし香港の中に中国共産党にとって都合の悪い人間がいた場合、その人に難癖付けて引き抜き放題になるやん!」
デモへ
④五大要求
香港の人達は去年いきなり怒り出したわけでなく、
返還されてからずっと民主主義について主張していたのです。
2019年から2020年現在まで香港デモの参加者は次の5つを要求しています。
1:逃亡犯条例改正案の撤回(2019年9月に達成)
3:警察の過剰な対応(デモ参加者視点)を取り締まる独立調査委員会の設置
4:逮捕されたデモ参加者の釈放(周庭さんは釈放や取り下げではなくではなく保釈)
5:過去の抗議活動を暴動認定していたことを撤回
さらに2020年6月30日に成立した香港国家安全維持法が、上記の2003年に出た国家安全条例に近い内容な上に、コロナのゴタゴタの中で正規の手続きを踏まずに成立したのではないか?と議論されています。
香港の人達の希望する民主性はどこに向かうのでしょうか?
今回の前編では香港デモのザックリのあらすじと、中国の管理体制についてお話ししました。
後編では
日本も昔は中国と同じことやってたよね?
今後国民が道徳規範への解釈を間違えたら日本だって同じような問題が発生するかもしれないよね?(別に陰謀論じゃないよw)
という話をします。
あなたはどう思いますか?
後編はコチラ!
jintarou-tai-gun-sai-yo4.hatenablog.com